定期的に特集いたします阪南市の「財政」・・・阪南市が「第二の夕張」にならない理由

今までも何度もこのブログでお伝えしております、阪南市の財政について。去年の4月にも特集を組みましたし、選挙のときにもブログに書かせていただきました。

今回は最近、阪南市は財政危機で「財政破たん寸前」だ、「第二の夕張」になるといって市民の不安や不信感ばかり煽る方がいらっしゃいますので、しっかり根拠をもって否定しておきたいと思います。

まず、夕張市について勉強しておきましょう。

財政再建団体、夕張市について

夕張市は平成18年(2006)深刻な財政難のあおりを受け、平成19年(2007)3月6日をもって財政再建団体に指定され、353億円の赤字を抱えて事実上財政破たんしました。夕張は、かつて炭鉱の街として栄えましたが「石炭から石油へ」のエネルギー政策転換により、次々と炭鉱が閉山、平成2年(1990)には最後の炭鉱が閉山し、夕張から炭鉱がなくなりました。これにより、炭鉱会社が鉱員向けに設置したインフラを市が買収することになりました。

市は、石炭産業の撤退と市勢の悪化に対し、「炭鉱から観光へ」とテーマパーク、スキー場の開設、映画祭などのイベントの開催、企業誘致により地域経済の再生、若年層を中心とする人口流出の抑止、雇用創生などを図ったものの、ことごとく振るわず、観光・レクリエーション投資における放漫経営が累積赤字として重くのしかかった結果、市の財政を圧迫していきました。

平成14年(2002)3月、市はスキー場を買収することを決め、市債を発行し資金調達しようとしましたが、北海道庁は負担が重すぎるとして許可しませんでした。そこで市は土地開発公社に買収させ、市が肩代わり返済するという「ヤミ起債的行為」が始まります。重ねて、夕張市は一般会計と特別会計の間で貸付と償還を繰り返すことによって帳尻を合わせ、巨額の赤字を見えにくくしたと指摘されています。北海道が調査にした結果、既に平成18年度決算で再建団体適用状態だったことが判明しました。これを受け、市長は平成18年(2006)7月25日に当該年度中の財政再建団体を申請する方針を表明しました。

以上が夕張市を取り巻く一連の状況でした。

つぎに、夕張市の破たん以降の地方公共団体の財政について勉強したいと思います。

地方の財政について

夕張市が財政再建団体になったすぐあと、平成19年(2007)に国では「地方公共団体の財政の健全化に関する法律(2007年6月22日法律第94号)」が施行されます。地方公共団体(都道府県、市町村及び特別区)は、毎年度、以下の4つの健全化判断比率を監査委員の審査に付した上で、議会に報告し、公表しなければならない、と決まっています。

①実質赤字比率

②連結実質赤字比率(全会計の実質赤字等の標準財政規模に対する比率)

③実質公債費比率

④将来負担比率(公営企業、出資法人等を含めた普通会計の実質的負債の標準財政規模に対する比率)

さて、この4つの指標ができたわけですが、この4つの指標について悪化した場合、イエローカードレッドカードというような扱いが適用されることになります。

財政健全化団体:イエローカード

○健全化判断比率のうちのいずれかが早期健全化基準以上の場合には、財政健全化計画を定めなければならない。

実質赤字比率

都道府県 – 3.75% (ただし都については特別区に関連した補正が加えられる)

市町村・特別区 – 財政規模に応じ11.25 – 15%

連結実質赤字比率 – 実質赤字比率の基準に5ポイントを加えたもの

実質公債費比率 – 25%

将来負担比率

都道府県及び政令市 – 400%

市町村・特別区 – 350%

・その年度内に地方公共団体の長が財政健全化計画を作成し、議会の議決を経て定めなければならない。(国などの監督はナシ、議会での議決義務)

過去の事例(2015年末の時点で財政健全化団体は存在しない)

北海道 – 歌志内市(平成21年度)、江差町(平成21年度〜平成22年度)、由仁町(平成21年度〜平成22年度)、浜頓別町(平成21年度)、中頓別町(平成21年度〜平成22年度)、利尻町(平成21年度)、洞爺湖町(平成21年度〜平成23年度)

青森県 – 大鰐町(平成21年度〜平成27年度)

山形県 – 新庄市(平成21年度)

福島県 – 双葉町(平成21年度〜平成22年度)

群馬県 – 嬬恋村(平成21年度)

長野県 – 王滝村(平成21年度)

兵庫県 – 香美町(平成21年度)

大阪府 – 泉佐野市(平成21年度〜平成24年度)

奈良県 – 上牧町(平成21年度〜平成22年度)、御所市(平成21年度〜平成23年度)

鳥取県 – 日野町(平成21年度〜平成22年度)

高知県 – 安芸市(平成21年度)

沖縄県 – 伊平屋村(平成21年度〜平成22年度)、座間味村(平成21年度〜平成23年度)、伊是名村(平成21年度〜平成23年度)

財政再生団体(財政再建団体):レッドカード

○再生判断比率(①~③)のいずれかが財政再生基準以上の場合には、財政再生計画を定めなければならない。

・国の指導・監督のもと「財政再生計画」を策定する。これには、地方議会の議決と総務大臣の同意が必要。同計画にもとづき、予算が編成され、歳入・歳出の両面にわたって厳しいチェックを受ける。

平成になってから財政再建団体となった地方自治体例としては、福岡県赤池町(現在の福智町)、北海道夕張市が知られている。

福岡県赤池町(現在の福智町) – 1992年度に財政再建団体となり、2001年度に再建が完了。

北海道夕張市 – 2006年夏、ヤミ起債による財政危機が表面化し、財政赤字が巨額に上ることから自主再建は困難であるとして、財政再建準用団体の申請を行い、2007年3月6日認定された。同年4月1日から、福岡県赤池町以来の財政再建団体となった。

阪南市財政健全化計画の策定

阪南市は去年(2017)の10月「阪南市財政健全化計画(平成29年度~平成33年度)」を作成しますが、これは上記イエローカードの「財政健全化計画」に当たるものではありません。このままいったら平成33年度にはイエローカードになりそうなんで、自主的に、今のうちから「財政健全化計画」作っときますー的な計画です。くれぐれも間違えないでくださいね、法律に則った財政健全化じゃなくて、あくまで「自主的」な計画です。

阪南市の現状を記しておきます。

阪南市の現状

〔平成 28 年度 財政健全化指標〕

実質赤字比率(%) ※黒字のため数値無し (早期健全化基準 13.2 財政再生基準 20.00)

連結実質赤字比率(%) ※黒字のため数値無し (早期健全化基準 18.21 財政再生基準 30.00)

実質公債費比率(%)9.1(早期健全化基準 25.00 財政再生基準 35.00)

将来負担比率(%)67.8(早期健全化基準 350.00 財政再生基準 -)

以上です。いずれも早期健全化基準とは程遠いものになっています。

これで、阪南市が「第二の夕張」にならないことが分かったと思います。もし少しでも財政破たんしそうになったら、イエローカードなどが出たりして、ブレーキがかかる仕組み・法律になっているんです。

ただ、そうは言っても、前々から申しております通り、阪南市の財政は昔から厳しいのも事実です。今まで、その厳しい状況ではありながら、工夫し、努力し、みんなで力を合わせて、前向きな、魅力あるまちづくりを進めて来たんです。いま、夕張市でさえ「市民が地域の未来を前向きに考えられるようにしないと《2度目の破たん》になりかねない」と緊縮一辺倒からの方向転換を訴えています。何事もバランスが大切で、正しい情報の受発信が必要であるということです。

最後に一つ、今回(去年10月)の「自主的」阪南市財政健全化計画の中に健全化のための取り組みが書かれていますので記しておきます。

財政健全化に向けた取組項目

① 歳入の確保

1) 予算編成作業の見直し

事業費の積み上げから予算編成を行う手法を改め、中期財政シミュレーションより見積った次年度の歳入額を踏まえ、事業予算を見積って予算編成を行うことにより、財政規律を確保します。

2) 市税の確保

市税収入を確保するため、課税物件などを的確に把握するとともに、市税徴収率の向上を図ります。

3) 適正な受益者負担の実現

使用料・手数料に関する基本指針に基づき、受益者負担の公平性の観点から、使用料・手数料の適正化を図ります。

4) 遊休市有財産の処分

市の所有する遊休市有財産のうち、利活用の見込みがないものについては売却処分を進めます。

5) その他の収入の確保(ふるさと納税/広告収入/クラウドファンディング等)

新たな収入確保の方策を模索し、市の事業実施に必要な財源の確保に努めます。

② 歳出の抑制

1) 人件費の適正な管理

職員定員管理計画等に基づき、定員の適正管理を進めるとともに、総人件費の抑制に努めます。

2) 事務事業の見直し

 総合計画を実現するための行政経営計画にもとづき、市の施策・事務事業を毎年度見直すことにより、事業の課題解決、成果・効果の向上を図り、市民サービスの充実と持続可能な市政運営に努めます。

3) 計画的な投資的事業の実施

予算編成作業の見直しに合わせ、財政状況に見合った投資的事業を実施することで、公債費の抑制を図ります。また、新たな施設の整備事業については、事業開始年度までに総事業費の一般財源相当分を基金に積み立てます。

4) 補助事業の見直し

各種補助金等の内容や額について効果や公平性の観点から検討を加え、必要な見直しを行います。

5) 施設規模の適正化

市の抱える公共施設について、集約化、複合化、処分等により、公共施設の保有量と延べ床面積の最適化を図ります。

6) 外部委託の推進

市の事業につき民間のノウハウを導入し、より効率的な事業実施と市民サービスの向上及び総人件費の抑制に努めます。

③ その他項目

1) 特別会計の健全運営

一般会計のみならず、特別会計においても効率的な事務・事業の実施に努め、一般会計からの繰出金の抑制に努めます。

以上です。今回は、内容的に盛りだくさんになりました。最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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